悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
ビクビクした様子のメイドを、アリスは首を傾げて見つめた。
(そうか、私は転生してから今まで、周囲に意地悪く接していたものね)
彼女は亜里の記憶が覚醒するまで、悪役令嬢らしく周りに振舞っていた。
まるで腫れものを触るようなメイドの様子で、自分がいかにいけ好かない人物だったか悟る。
「ん? ちょっと待って。今夜婚約発表って言った?」
メイドに確認すると、彼女たちは黙って首を縦に振った。
(やばい。断罪イベントの直前じゃないか)
国王主催の舞踏会で、王子が婚約者を発表する。それがこの世界のベースとなったゲームのラスト直前シーン。
好感度を一番高く上げた王子が主人公を指名し、主人公を苛め抜いたアリスが断罪されるというシーンだ。
(たしか私は、主人公の暗殺計画を立てていたことを暴露されるんだ)
ゲームのあらすじを思い出し、戦慄するアリス。
このままでは未来の王太子妃の命を狙った罪で、投獄されてしまう。
「ちなみに、王子ってどの王子だっけ」
「え? もちろん第一王子のアーロン様ですけど」
第一王子のアーロン。メインのキャラクターで、主役らしい臙脂色の髪をした王子だ。
(よし、推しじゃない!)