悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 舞踏会は、王子の住む城で開かれる。

 薄い水色のドレスを纏ったアリスは、雪の精さながら。と、自分で思っていた。

(美人に生まれ変われただけでも感謝しないとね)

 執事と共に舞踏会会場の大広間に入ると、見覚えのある令嬢たち六人がアリスを取り囲んだ。

(あ、この服知ってる。モブたちだ。こんな顔してたんだ)

 ゲームの中で、悪役令嬢の後ろについていた金魚のフン。

 顔はぼんやりと描かれていたが、今はしっかり彼女の前に存在している。

「アリス様、なにかあったのですか?」

「あの女が無事に来ているではありませんか!」

 声をひそめて質問する彼女たちの目には、非難の色が浮かんでいる。

 もちろん、アリスの暗殺計画が失敗したことを言っているのだ。

(そりゃあ、こんなに大勢が知っている計画がうまくいくわけないわよねえ)

 亜里の記憶が、ゲームのシナリオにツッコミを入れる。

「ごめんなさい。私は今日から、生まれ変わったの。もう、人を虐めるとか、陥れるとか、無意味なことはやめにする」

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