悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 少し昼寝したあと、ドアを叩く音でアリスは起こされた。

「おーいお嬢。宴会の準備ができたぞーい」

 楽なドレスに着替えてドアを開けると、カールが立っていた。

「お嬢じゃありません。私のことは妃とお呼びなさい」

 できる限りの怖い顔を作って睨むアリスを、カールは笑い飛ばした。

「おおっほうっほう。すみませんなあ。じゃあお妃さま、さくっと行きましょうや」

 これは好かれているからフレンドリーに接しているというわけではない。単に子供だと思ってバカにされているのを肌で感じ、アリスは苛立つ。

 むすっとした表情で階段を降りていくと、広間はざわざわとしていた。

「おーい別嬪さーん!」

「一緒に飲もうぜ~!」

 テーブルにはどこかに発注して届けさせたと思われる料理が並び、隊員たちは主役が来る前にすでにそれに手をつけ、アルコールまで飲んでいる。

「おいお前たち、もう少し彼女に敬意を……」

 ルークが大声を出すが、気づかない隊員たちの笑い声にかき消される。

 夫の情けない様子に余計に腹が立ち、アリスは大股でルークの隣まで歩き、彼女の席に用意されていた曇ったグラスを持った。

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