悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「ではみなさん。今日という素敵な日に」
隊員たちはアリスの高い声に気づき、グラスを掲げて声を合わせた。
「かんぱーい!」
「って、そういうわけにいくか~!」
怒鳴ったアリスは、銀のグラスを床に叩きつけた。グラスは床に当たり、コーンとマヌケな音を立てて転がる。
隊員たちは呆気に取られ、アリスを見た。
「あんたたち、お酒を飲めるのは今日だけだからね。明日からは、ひとり一杯まで!」
「ええ~っ」
巻き起こるブーイングにも、アリスは怯まない。ルークは眉をひそめ、事の成り行きを見守っている。
「どいつもこいつも酒臭いのよ! そんなやつらを、誰が信用するの?」
アリスは人差し指で隊員たちが座るテーブルを指さす。
「あとね、ご飯なんとかしなさい! 肉しかないじゃない。 もっと色々な食品をバランスよくとらないと、あんたたちみんな年寄りになれずに死ぬわよ!」
そこまで一気に吐き出し、息を継ぐアリスに、誰かが笑って反論した。
「好きなもん食べて、酒が飲めれば、長生きできなくたっていいんだよ! どうせ俺たちゃ所帯も持たないはぐれ者だ」
そうだそうだと同意する声を、アリスは一喝した。