悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
「叔父上」
ルークが苦々しい顔で、彼をにらんだ。
彼は隊員の中でも一際異彩を放つ巨躯で、額の切り傷とでっぷりとした腹が目立つ。
「俺はこれからも好きなだけ酒を飲ませてもらう。行くぞ」
マントを翻す彼に続き、近くにいた三人が席を立った。
「ちょっと、待ちなさいよ……」
「アリス、放っておけ」
ルークに腕を引かれ、アリスは口を閉じた。
隊員の中にも、席を立った彼らを注意しようとする者はいない。
「あれは俺の叔父で警備隊副長のジョシュア。一度気分を害すると暴れて手がつけられなくなる」
「暴れる? そんな人が副長なの?」
「国王の兄弟だからな」
その一言で、アリスは察した。
ジョシュアは国王に疎まれて辺境の地に飛ばされ、名前だけの副長となったに違いない。
「仕切り直そう。今日は好きなだけ飲むといい」
ルークが言うと、隊員たちは食事を再開した。
かわるがわる挨拶しにくる隊員の名前を、アリスはできるだけ覚えた。
そのうちに芸を披露する者が現れ、いつの間にか笑っていた彼女を、ルークも笑顔で見つめていた。