悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
おもむろにズボンを脱ごうとした隊員を、ルークが俊敏な動きで止めた。
「ねえみんな。女性がいるお店に行くのはいいけど、病気をうつされないでよ! とにかく清潔な女の人と遊んでちょうだい」
いわゆる性病の類にかかっている隊員も何人かいた。
痩せすぎ、太りすぎ、高血圧、皮膚病、怪我など、文句なしに健康な隊員はやはり少ない。
「ほらあ、言わんこっちゃない」
記録を見ながら、アリスはため息を吐いた。
下痢や便秘が続いている者などもいるのに、どうして医者に見せないかと言うと……ルークがこの前言っていたように、この地には医者がいないからである。代わりに祈祷師。
そしてここの隊員たちは、祈祷師を頼るようには見えない。
「ありがとうございましたー」
診察を終えた隊員たちが服を着て部屋を出ていった。
「これで全員終わり?」
「いや、その……」
聞かれたルークが気まずそうに顔を背けた。
アリスは気づく。そう言えば、ルークの叔父、副長のジョシュアとその取り巻き三人が来ていない。昨夜の宣言通り、アリスの指示には従わないということだ。