悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 城に戻ったアリスとルークは、全員で簡単な昼食をとったあと、午後の非番隊と一緒に洗濯物を取り込みに行った。

「あーこらそこ! 地べたに落とさないで。せっかく洗ったのに」

 相変わらず雑な男たちに指示を飛ばしていたアリスの裾を、強い風がさらった。

「きゃっ」

 ドレスの裾を抑え、目を覆う。隊員たちは砂が入らないよう、洗濯物カゴに覆いかぶさった。

 一陣の風が行き過ぎた後、アリスが目を覆っていた手をどかすと。

「あっ!」

 まだ干してあった一枚のシーツが、上空に舞い上がっていた。

「待ってー!」

 シーツ一枚でも城の貴重な備品だ。アリスはブーツを履いた足で、シーツを追いかけて走りだす。

「お妃様!」

「俺が追いかける。お前たちは作業を終えたら、先に城に戻っていてくれ」

 軽装のルークもアリスを追いかけ、行ってしまった。

「隊長がいるなら大丈夫かな?」

 隊員たちは顔を見合わせた。シーツが飛んでいったのは街の方だし、変なことにはならないだろうと判断し、のんきに洗濯物を取り込み、城に戻った。

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