悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
厨房の侵入者
アリスが嫁いできて二週間後。ルークの城は、見違えるほど清潔になっていた。
老朽化した外壁はどうしようもないが、中のカビや蜘蛛の巣はなくなり、こまめな換気のおかげで、嫌な匂いもしなくなっていた。
病気を持っていた者たちは静かに静養し、症状の悪化や他人への感染の恐れも減った。
「明日からのシフト表だ。各々目を通してくれ」
ルークが城の玄関に大きな紙を貼った。そこには、全員の負担が平等になるように国境警備のシフトが表になっている。
「『○』は一日お休み、『・』は八時から十七時の日勤、『△』は十七時から翌一時までの準夜勤、『▼』は一時~八時の夜勤ね」
アリスが説明書きをシフト表の横に貼った。
「おお、これは見やすい」
隊員たちは自分の名前と日付を見比べていた。
これもアリスが亜里のシフト表を思い出し、真似したものである。
今まではルークが管理していたが、仲のいい者どうしで適当にできた班が適当にサボりながら仕事をしていた。
国境警備と言っても、実情は国王が厄介払いをするためにつけた無理やりな名目だ。人がやっと通れる辺境の山道を見張るだけなので、仕事という仕事はない。なのでルークも見て見ぬふりをしていたのだ。