悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています
アリスもそれはわかっているが、今の隊員たちに必要なのは規則正しい生活と、適度なやりがいだ。
そしてこれからもずっと、この地の国境が突然侵されないとも限らない。
何かがあってから突っ込まれたら遅いのだ。
皆が何をしていたかという記録を残しておくことは、重要だとアリスは考えていた。
「日勤の数が多すぎやしませんか」
「もちろん何人かは市中の見回りや私の手伝いをしてもらうわ」
「手伝いって、掃除や洗濯ですか」
「ええ。楽しくやりましょう」
不満そうな隊員たちもいたが、アリスは笑い飛ばした。
朝から晩まで患者の看護で走り回っていた亜里に比べれば、みんなで家事をすることはどんなに楽かと思う。
「お妃様にはかなわねえや。俺たちどんどん、無駄に健康になっていく気がするわ」
カールが笑って頭を掻いた。
周りの苦い顔をしていた隊員たちもつられて顔をほころばせる。
「ああ? なんだこりゃあ」
剣呑さを含んだ声が、その場の空気を壊した。
一同が振り返ると、ジョシュアを取り囲んだ一行がシフト表を一瞥した。