悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

「はっ。大した仕事もないのに、無駄なことをするもんだ」

 今にも破りそうな勢いで、取り巻きのひとりがシフト表をペタペタと触る。

「無駄じゃない。無駄で国の厄介者だった俺たちは、これから変わるんだ」

 ルークが強い調子で言い、取り巻きの細い手首を掴んだ。

 彼のオッドアイに睨まれた男は怯み、ルークの手を振り払って引っ込めた。

「五元素の魔法も使えないのに、大層なことを。国王を見返してやるつもりか?」

 取り巻きの後ろから嘲笑したのは、ジョシュアだ。

 険悪な雰囲気が彼らの間に落ちる。

「見返そうなんてつもりはない。俺は俺にできることを、アリスとやるだけです」

「ふん。小賢しい小娘の言いなりか。情けない者よ」

 小賢しいと言われてカチンときたアリスは、前に出て言い返そうとした。ルークがそれを静かに手で制す。

「あなただって王族なのに五元素の魔法が使えないはみ出し者じゃないか。辺境の地で酒浸りになり、腐っていて恥ずかしいとは思わないか」

「……なんだと?」

 ジョシュアの凶暴な目がルークをにらんだ。顔の傷とあいまって、隊員たちが震えるくらいの迫力だ。

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