悪役令嬢ですが、チートが目覚めて溺愛されています

 ジョシュアにそのような過去があったとは知らなかったアリスは、驚いた。

(てっきり、酒に酔って暴れたりして国王陛下に嫌われたんだと思ってた)

 彼が酒浸りになったのは、自暴自棄になったからだったのだ。

「副長は相当お酒を飲んでいるの? さっきもお酒の匂いがしたけど」

「あ、ああ……。おそらく、水の代わりに飲んでるな」

「何年もそういう生活が続いているのね」

 アリスは眉をひそめた。長年のアルコール多飲。

「薬屋さんに薬を求めに行っているってことは、体調が悪いんじゃないかしら」

「そうだろうな。でも意地でも俺たちには頼りたくないと見た」

 いったい、どういう症状で薬屋に通っているのか。薬屋の奥さんが目当てかと思ったけど、本当にそうなのか。

 考え込みそうになり、アリスは首を横に振った。

 ルークがジョシュアをなんとかしてやりたいと思っても、彼自身が変わりたいと思わなければ無理だ。

「仕方ないわね。心を開いてもらえるまで、気長にやりましょう。次の行動を考えてあるの」

「まだ改革が続くのか」

「嫌?」

「いいや、楽しみだよ」

 ルークは微笑み、アリスの手を握りなおした。

< 86 / 215 >

この作品をシェア

pagetop