恋泥棒の犯行予告
1章 5月19日 奪われた××
ピーマンが嫌い。
歩く度足にまとわりついてくるスカートが嫌い。
家まであと100mのところが嫌い。
近づく度に気分は沈んでいって、けど心臓がふわふわして体が軽くなる。
家の玄関で一度足を止めた。
ドアをそっと開けると…ほら。お母さんの靴の横に、明らかに男モノのスニーカーが並んでいる。
奥から聞こえる、お母さんと男の人が楽しそうに話す声。
まったく、年頃の娘がいるのに何を平気でこんなこと…。
「お母さん!何で今日もコイツがいるの!?」
リビングの大きな机の上に広げられたたくさんの教科書。
あぁ、今日は私の嫌いな化学の宿題があるんだ。
さも当然のように私の家に居座っている幼なじみは、片手にスイカを持ちながら目を丸くしている。
「おかえり、六花。今日補習あるんじゃなかったっけ?」
「アンタも同じコマ取ってたよね? 何で来なかったの」
にこにこ笑顔のお母さんを横目に、ジリジリと日世に詰め寄る。
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