恋泥棒の犯行予告
いったい、どれほど決心してその言葉を発したのか私には分からないけれど、空気を伝う緊張感が薄着の肌に刺さった。
「……」
なにも言うことができず、ただ口をつぐむしかない。
沈黙のなか耳に入ってくるのは花火の音と、それから……
「あーー炎色反応の復習しないとなー」
「俺も忘れかけてるかも。かろうじてストロンチウムが紅色だったことは覚えてるくらい」
やけにはっきりと聞こえる、対岸の声。
聞きなれたいつもの声を必要以上に拾ってしまう自分の耳がすべてを物語っている。
圭斗が怖がってたのって、こういうことでしょ?