恋泥棒の犯行予告
横では有がガシャガシャと氷をストローで突っつき続けている。
「俺さ、あんまり幸せな恋愛とかしたことなくて」
初めて有の口から恋愛話を聞く。
この時だけは、店内が妙に静かに感じられた。
「なんかいいよな、そういうの。ヒナも橘もすごく幸せそうで。悩んでるのもなんか幸せそう。俺はその話を聞くたび、俺って何してんだろうって思える」
恋愛だけが全てじゃねーのに。
そんな悲しそうな目を、これまで一度でもしたことがあっただろうか。
いままで有の欲しかったものは、そんな自分を慰めるための気休めだったのかもしれないと彼は言う。