恋泥棒の犯行予告

「どしたの」

「そこの英文意味わかんない……。知力の限界。引退かも……」

「引退したら大学行けないじゃん。うわっ文構造えぐっ……」


ひっくり返った日世はごろごろ転がりながら呻き声をあげている。

クラスの女子が見たらびっくりするような光景だろうな……。

付き合いはじめて1つ変わったことといえば、日世がこうして無防備な姿を頻繁に晒してくるようになった。

一度理由を訊いたことがある。


『マジ? 緩んでんなぁ俺。前まではかっこつけようと必死だったからさぁ。あまりにも目に余るようなら言ってね』


別にいまのままでもいい、というか今の方がいい。と言ったのは、日世を気遣ってのことではない。

キレイな日世でいられると、どうも調子が狂うからだ。

何度か日世に抱き締められたりキスを仕掛けられたりしているけれど、心臓の暴れ具合が尋常じゃない。

なんか……口から心臓出てくるんじゃないかっていうくらい。


「ねむっ……」


それだけ残して日世が目を瞑ってしまった。

まぁ消耗するもんね。
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