恋泥棒の犯行予告
時計の針が直角を形作ったころ、そろりと自分の家へ改めて足を踏み入れた。
その後ろからヒナの足音がついてきていることを何度も何度も確認する。
「ヒナ、」
「わかってる。ここにいるから」
リビングを覗き見ると、ばちり、お母さんと目が合った。
「六花っ……」
その目の前には腕を組み眉間にしわを寄せているお父さんの姿。
お母さんは少し疲れたような顔をしている。
私のことで悩ませてしまったんだろう。
「……お父さん。一回だけでいいから話を聞いてほしい」
「何度も何度も同じ話をさせるな」
やっぱり、だめか。
そもそも取り合ってもらえないんじゃ話にならない。
今日は無理だと思ってヒナに帰ってもらうよう伝えようとしたその時だった。
「武久さん、それじゃあ何も伝わりませんよ」
頭ひとつ高いところから、今までにないくらい優しい声が降ってくる。
「思ってることがあるなら言わないと。俺たちは高々17年ほどしか生きてないんだから、武久さんと同じようにものを見ることができないんです」
ね、と私のお母さんに笑いかける。
お母さんもつられたように、その口元を緩めた。
「武久さんに思うところがあるように、六花にも思うところがあるんです。いったんそれを聞いてあげてください。こう見えてちゃんとした考えがあるんですよ、六花には」
日世が言い終わると、お父さんがおもむろに椅子から立ち上がった。
「日世くん、」