恋泥棒の犯行予告
くっと、体に力が入る。
それは日世も同じだったようで、隣でごくりと喉が動いた。
「君はなんでそこまで六花のことを気にかけてくれるんだ」
ここで気づく。
私まだ日世と付き合ってることお父さんに言ってない。
お母さんにも言ってないけれど、なんとなく気づいてくれている感じがしたから直接この口から伝えたことはなかった。
「……」
静かに日世を見上げると、彼は困ったように眉を下げて、それから意を決したように言った。
「六花は俺の大切な人だからです。真剣にお付き合いさせてもらっています」
芯の通った、凛としたよく届く音。
お父さんの目が一瞬見開かれ、少しのあと、目じりが柔らかに下げられた。
「六花からその話は聞いたことないんだけどなぁ」
「ごめん……」
顔に熱がこもっていく。
私の様子をみたお母さんがクスクスと笑い、「お父さん、そんなの年頃の娘がかわいそうよ」と言った。
「……六花、すまなかったな」
この通り年頃の娘の扱い方がわからん父親で、と照れたように言われてしまえば、これまで何に対して怒っていたのかを忘れてしまいそうだった。
「ちゃんと話を聞くよ。ダメな父さんで悪かったな」
ただ今日はもう疲れたな、とお父さんがコーヒーの入っていたカップを片す。