永世中立でいたいんだけど、そうさせないのが君たちだよね 〜龍になっております〜
「…りんちゃんは不思議なことを言い出すのね」
少し青くなった口角をふっと上げて優しく私に語りかける。
「どうしてぇ?お母さんは夢見ないの?」
母の青くなった部位を見つめながら純粋に質問をしたつもりだった。
「…見るよ。お母さんはずっと夢の中にいたいな」
「私もー」
今思い返せば純粋な質問に純粋な回答をしたとは思えない言葉だったな。
私の母と私はいつも父方のおばあちゃん家で寝泊まりをしていた。
私の父はと言うと、今で言うやり手社長。運送会社の社長でお金持ち。顔よし、性格よし、家族思いで皆からも尊敬を集める人柄。というのが表の顔。裏の顔は私たちにとっては恐怖の象徴だった。
何故かって…。私たちがおばあちゃん家に預けられてる理由は、大きなマイホームにお父さんの愛人がいるから。堂々と愛人を母に紹介してる時は幼稚園生だった私も驚いた。
「なんでお父さんとその人ちゅうしてるの?」
父に言っても無反応。母に言っても無反応。
父の隣に座る女の人はとても綺麗で。まるで絵本から飛び出したシンデレラのような女性だった。
「…お前たちは今日から俺の母ちゃんの家で暮らしてもらう。」
父から発せられた言葉は容赦なく母に降り注がれる。
「…でも、あなた…。」
母が父に縋るような声で言葉をかけようとしたその瞬間。
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