永世中立でいたいんだけど、そうさせないのが君たちだよね 〜龍になっております〜
「…という訳だ。何か裏があると思いつつも処刑を決行したが、まさかあの伝説に名を残す純白の龍族がこの萎びたなんの能力もない餓鬼に飼われていたとは…。」
私はまた怒りで理性が飛びそうになった。…本当に、本当にゆいなのか。こんなにも酷い言葉がどこから出てきているのだ。
「…クロウは萎びた能力のない餓鬼なんかじゃない…!」
「だったらなんなのだ。魔道士の勉強なんて全くもってしていないらしいではないか。毎日どこかへふらっと消える。何をしているかと思えば…」
ゆいから嫉妬の感情が読み取れる。黒く、どす黒い塊がゆいの背中に渦巻いている。
ーーこの餓鬼。あたしを差し置いてあんな稀有な龍族を手に入れている。あぁ、憎い、妬ましい、殺したいっーー
「ゆいはクロウの気持ちが分からないの?」
ゆいはギョッとした顔をして私を見下ろす。
「どうしてあたしの名前を…」
気にせず続ける。
「クロウは今、ゆいが心で思ってることが起こるのが怖いから私の存在を隠してくれた…。自分の命と引き換えに私を守ってくれようとしたっ…」
ゆいに必死で訴えた。
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