永世中立でいたいんだけど、そうさせないのが君たちだよね 〜龍になっております〜
「ありがとう。ところでクロウに会いたいからこれを外して欲しいんだけど…」
重い鎖を目で指し示す。だがクロウに似た男の子は相変わらず穏やかな笑顔でいて何も反応はない。まるで私の声が聞こえていないように。
心配になった私は別の話題を振ってみる。
「君、クロウにそっくりだね。」
すると男の子は
「はい。私はクロウの兄です。」
耳を疑った。クロウには兄弟がいたのか。ならどうして男の子なんていう言い方で私に生存確認の報告をしたのだろう。
「クロウは魔道士の中でも格段に能力が低く、医療魔法を中心に習得していくはずだったのですが全くもって向上することがなかったので家を追い出されたのです。」
そういう事か。それにしてもなんて残酷な話。家を追い出すとはあんまりではないか。まだ小さいのにいきなり捨てられてしまうとは。
「…クロウは才能に満ち溢れているよ。あの結界魔法だってクロウが作ってくれた。」
私はクロウの味方をしたくてそう言った。
「そうでしたか。驚きですね。あんな高度な技を完成させるとは。私たちも結界を解くのに何時間も費やしましたから。」
穏やかな顔が少し淋しげになった。
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