死にたい夜にかぎって。
1.あめはきらい
雨が降り出した。
雷鳴が轟いた。
水たまりが跳ねた。
空から落ちてくる大粒の雨粒は、ひっきりなしに地面へと叩きつけられる。これはしばらく止まないだろうな。
今日の降水確率は60%。今朝、天気予報士が耳にタコができるほど繰り返していたけれど、私は自分の勘を信じた。だって、すごく微妙な数字だった。降るか降らないかは、正直運でしょう。そして信じてしまった結果が、これなんだけども。
ああ、洗濯物干してくるんじゃなかった。横殴りに吹き付ける雨風をしのぐこともできないベランダを脳裏に浮かべて、ため息を一つ漏らした。
「...誰か取り込んどいてくれないかなあ」
雑踏の中に消えていった独り言は、最初から私だけのもの。わかりきった答えに駄々をこねるように鞄を漁ったけれど、玄関に置きっぱなしの折り畳み傘は見つかるはずもなかった。
馬鹿だなあ、わたし。
せめて小雨になるまで。
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