わたしの大切な初恋くん
ぱたぱたぱたと、廊下を走っていったのか、どんどん足音が小さくなっていく。
「聞こえちゃってるんだよなぁ…これが」
はぁー…とため息をつくと肩を叩かれた。
「しーのー、嘘だと思われてんじゃん。ま、そりゃそうだよねぇ椎乃と鈴下は無いって。まじで。」
いつの間にか隣にいた花流(はる)が私のほっぺをつつく。
「だって私もたまに信じられなくなるよ、椎乃のが好きすぎて鈴下の前では敬語とか。」
「敬語は花流の前でも使いますー!確かにあんなふうにずっと敬語なのはあんまり……というか理久くらいだけど…」
「ほらぁー言った通りじゃん。本当に分かんないわ。」
花流は私の髪をいじりながら鼻歌を歌っている。
花流は理久の次に長い付き合いで小学生のころ出会ってから高校生の今までずっと一緒だ。
進学先も、クラスも。
だから良く、知っている。知っていて欲しくないことも。