如月の空の下、光る君を見つけた。
「オレの父親は作曲家、母親は世界中で公演を行う管弦楽団のフルート奏者。音楽一家に生まれたオレは幼い頃から色んな楽器をやらせてもらった。

ピアノ、バイオリン、フルート、サックス、トランペット、ギター、ベース、ドラム。色々やった結果1番良かったのはギターでそれは今でもやってる。

だけどオレは歌うことが好きだった。4歳の時に見に行ったミュージカルでオレはすごく感動した。自分もこの舞台に立ちたい。あのこみたいにスポットライトを浴びて父や母みたいに有名になりたいって思った。

それでミュージカルのオーディションを受けるためにレッスンを受けて何回も何回もオーディションに行った。だけど毎回不合格。

脇役でもいい、ワンシーンでもいいからって色んなオーディションを受けたけど落ち続けた。

父からは白い目で見られるようになって母は言葉には出さないけどガッカリしてるのは電話の声のトーンで分かった。

なんとしても表舞台で輝かなくてはならない。そう焦ってたオレに声をかけてくれたのが今の事務所の社長。たまたまレッスンを見に来てて、うちに来ないかって誘われた。オレは嬉しくて誰の許可も得ず勝手に着いていって契約した。

それからはもう地獄。地獄ってか戦争か。100人いるなかでデビュー出来るのはたったの5人だって最初のミーティングで言われた。

勝ちたければ死に物狂いの努力をしろ。口から血が出るくらい声を出せ。倒れるまで、這ってでも踊れ。そう言われるがままやるうちに3年が過ぎてデビューが決まった。

1軍にいた15人のうちの残る10人はあと5年後にデビュー出来るかは分からないって言われてやめた人もいる。オレはその人たちの分まで頑張らなきゃって思って必死に頑張って来た。

センターとしてグループを引っ張り、衝突しそうになったら止めに入って、常にベストコンディションで最高のパフォーマンスが出来るように誠心誠意努力してきたんだよ。でも...それももう...限界なんだ...」



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