如月の空の下、光る君を見つけた。
大きな呼吸を繰り返す詩央くん。


苦しそうで悲しそうで辛そうで、見ていられない。


私は我慢出来ず、彼を優しく抱き締めた。


こんなことしちゃいけない。


他のファンに怒られる。


誰かが見てて写真を撮られ、それをSNSにさらされたら炎上だ。


それでもいい。


彼が彼でなくなって、ここから消えてなくなるよりはぜんっぜんいい。


私はどうなったってかまわない。


彼をこのままにしておくわけにはいかないんだ。


闇に埋もれて立ち上がれなくなる前に私がしっかり受け止め、抱き締めてあげないと息が出来なくなってしまうんだ。


彼の声が聴けなくなってしまうんだ。


そんなの...そんなの...やだ。



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