如月の空の下、光る君を見つけた。
「あっ...」



電灯がついた。


こんな時になんでつくのよ~。


バットタイミングにもほどがある。



「ごめん。なんか...ほんとごめん」


「いいよ。辛い時くらい思いっきり泣きなよ。幸い暗くてブッサイクな泣き顔は見えてないから」


「ブサイクって、アイドルに対して失礼だ」


「なら、私に対しても失礼だからね。お願いだからやめて」


「分かった。やめる。ブスブス言ってすみませんでした」


「それでよしっ。じゃあ仲直りってことで握手」


「はぁ...」



いやいややる感じもまた可愛い。


なんかの罰ゲームで世界一苦い飲み物を飲まされるってなった時の直前の顔だ。



「無事停電も直ったし、帰ろっか」


「もしかして一緒に帰る気か?」


「うん」


「悪いけど昇降口までだ。それ以降は誰に見られてるか分からないから1人で帰ってほしい」


「う~ん、ま、いっか。しょうがないね、アイドルだもん」


「そういうことにしてもらわないと困る。そもそもボディタッチもアウトだ」


「よっしゃ!私今日めちゃくちゃハッピー!」


「良かったな」



良かったよ、詩央くんの気持ちを聞けて。


アイドルも色々あるなかで私達に笑顔と元気を届けてくれてるんだなって分かったし。


それだけで...十分だ。


それ以上は求めちゃいけない。


アイドルとヲタクだから。



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