如月の空の下、光る君を見つけた。
「あはは...あははは!」


「急に笑いだした。気味悪いな」


「妄想は完全無料だからね。えへへ...」


「オレには理解出来ない」



理解出来ないか。


理解する努力してもらいたいものだ。



「もう授業が始まる。いこう」


「はーい」



甘酸っぱい恋、青すぎる青春してみたかったなぁ。


なんでこーなっちゃったかなぁ。


少女マンガみたいな恋はさようならだな。


諦めてしまったらそこで試合終了なんだけど、もうこれは諦めるしかなさそう。


妄想は所詮妄想。


現実にならないからいいんだ。


そう言い聞かせよう。



「いつまで突っ立ってんだよ」


「ごめん。今こそ行きますっ」



詩央くんの背中を追いかける。


ずっとテレビ越しで見ていた背中が目の前にある。


私はその背中が見えなくならないよう、3歩後ろを着いて歩いた。


窓から吹き込む風はもうすっかり夏の香りがしていた。


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