如月の空の下、光る君を見つけた。
幸せMAX...のはずだった。


だけど詩央くんと別れ、1人で暗い道をとぼとぼと歩いていると急激に悲しみに襲われた。


詩央くんとカラオケに行く頃には私はファンクラブを抜けている。


正直、今すぐにでも抜けたいくらいだ。


あんなことがあってから素直に応援する気持ちにもなれなくなってずっと心には霧がきっていた。


その霧はいくらポケットに入るモンスターが霧払いしても払えないくらい濃いものだった。


何度も何度も払おうとしてもまた覆われてしまう。


もう昔には戻れないのだと悟った。


時は流れ続けているから、何事にも始まりと終わりがあるのだろうけれど、それを理解したくない自分がいる。


それを分かったって飲み込んでしまったら終わりがやってくる。


終わりの後の始まりを私はまだ描けない。


真っ黒く塗りつぶされたまま。


そう、この夜空のように。


都会の空には星が見えない。


祖父母の住む東北の空には満点の星と月が燦然と輝いていた。


場所が変われば見える景色も変わる。


それと同じように、私の考え方も変われば見える景色は変わるのかな?


この出逢いを終わりじゃなく、始まりだって言えるかな?


今はまだ言えそうにない。


まだ好きだから。


テレビの中だけの存在なのに、それでもまだ好きなんだ。


好きでいちゃいけないのは分かってる。


アイドルにも闇も影もあるって実感した。


それでも好きなんだよ。


そして、本当の彼を恨んでしまう。


光ってよ。


笑ってよ。


そう願っても彼には届かないのかな。


私は自分の爪先を見つめながら、駅に向かってただひたすら歩いた。


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