如月の空の下、光る君を見つけた。
電話を切るとすぐに私は部屋の中にあったお気に入りの雑誌を持ち出し、びりびりに破いた。


大事にとっておいた写真も1枚残らず破り捨て、ごみ袋にどんどん放り投げた。


父が死んでから私の時計は止まっていた。


いや、途中から動かないよう自制していたのかもしれない。


変わらないように。


変えられないように。


ずっと何かに依存し、何かに頼って自分の生きる道を歩み出そうとしていなかった。


アイドルに支えられて来たことを後悔しないし、今さら悪く言うつもりはない。


だけどそうやって私は現実逃避していたんだって今改めて分かった。


分かった今やらなければならないこと。


それは、


過去を清算し、自分の道に1歩踏み出すこと。


そう。


あの歌だってそう言ってた。


陽翔くんが歌ってたじゃん。


たとえ小さな翼でも、


青空に向かって大きく広げて、


飛んでいくんだ。


私は泣きながら、歌詞を呟いた。


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