如月の空の下、光る君を見つけた。
就活の終わりを迎えたその日。


私は会いたくない人と会うことになった。



「げっ...」


「久しぶりだな。相変わらずブスでいらして」



そりゃ、あなたのカノジョよりはブスでしょうねとは言わなかった。


イヤミを言うのはやめよう。


そういう自分ともお別れしたんだ。



「ドラマ見てたよ。最終回、ずっとキュンキュンしてた。すっごく面白かったよ」


「へえ~、聞かないんだ」


「何を?」



なんて聞かなくても分かってるっての。



「オレと愛川さんのこと」


「私もう如月陽翔さんファンやめたの。ちょうど解散宣言した日にライブいってて聞いた時はそりゃ驚いたけど、時が経つに連れて別にそうでもなくなった」


「ふうん」


「愛川さんとのことも別に好きにやればいいって思ってるし、彼が幸せならそれでいいよ」


「彼ってオレのことだけど」


「あっ、そっか。そうだった、そうだった。じゃ、詩央くんが好きなようにやりなよ。私からは以上。じゃ、帰るね」



長く話せば話すほど想いが再燃してきて辛くなるだけだから早く帰ろう。


学校に届いた内定通知と会社の資料、教科書とノートを手早く詰め込み、背負う。


忘れ物がないかを再度確認して



「バイバイ。また今度ね」



と言って立ち去ろうとした。


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