如月の空の下、光る君を見つけた。
しかし、彼が許さなかった。


がっしりと私の右腕を掴んで離さない。


私は顔を上げ、詩央くんと視線を交わした。


その瞳は光を失い、今目の前にいる私を軽蔑していた。



「何?」


「変わったんだなって思って」


「えっ?」


「見ないうちに変わっちゃったんだなって思って...。やっぱり如月陽翔でしか人を喜ばせられないのかな、オレ」


「詩央くん?」



なんでこんな悲しそうなの?


愛川さんと仲良くやってるんじゃないの?


なんでこんな表情するの?


私が想いを殺してまでお別れしたっていうのに、なんで詩央くんは笑わないの?


頭が混乱して適当な言葉が見つからない。



「ごめん...。帰っていいよ」



離された腕に熱を感じる。


このままではいけない。


詩央くんを1人にしちゃいけない。


詩央くんは陽翔くんとは違って失敗を恐れて足踏みしてしまう繊細で脆い人なんだ。



「帰らないよ」


「いや、でも...」


「約束したよね?約束は果たしてもらうよ」


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