空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
翌朝、私は香ばしい匂いで目が覚めた。

どうやらリビングのソファで眠っていたらしい。

ふわぁと大きなあくびをし、腕をぐーっと伸ばした後、振り返り、キッチンを見た。


「うわっ!」

「うるさっ」


猛ダッシュして颯翔くんに近寄っていく。


「すごぉい。キレイな卵焼き...。私には無理だよ」

「見られると緊張する」

「ごめん。じゃ、顔洗ってくるね」


何この状況?

颯翔くんの圧倒的カレシ感。

もうたまらなくいい。

夢じゃないよね?

鏡の前でパンパンと顔を叩き、頬をつねってみるけれどちゃんと痛いし、後が残る。

うん、やっぱり夢じゃない。

これは現実。

私が連れてきた運命。

わぁ...。

なんかクラクラしてきた。

嬉しすぎて幸せすぎて倒れそう。

と、鏡の前でニタニタニヤニヤふらふらしてると背中をツンツンされた。


「おはよ、お姉ちゃん。朝からしまりない顔。大丈夫?」

「あはは。大丈夫大丈夫」

「私さっき朝食頂いたから、部活行ってくるね」

「うん、行ってらっしゃい」


私の妹、緋萌(ひなも)は吹奏楽部の打楽器パートを担当している。

その妹から背中をバシンと叩かれたらたまったもんじゃない。

背中にビリビリ電流が走った。


「名波さん、カレシなんでしょ?邪魔者は誰もいないんだから、ちゃんとイチャイチャしちゃってよね。じゃっ!」

「ちょ、ちょっと!違うってば!」


全く、今の中学生って皆あんなにませてるの?

どうかしてるよ、日本。

それはいいから洗顔洗顔。

水をちょろちょろ出し、節水を心懸けながらゴシゴシしっかり洗う。

ふぅ...。

これできれいさっぱりだ。

いつもよりも念入りに洗って美しい状態で颯翔くんの朝食を食べるんだ。

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