空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
実はこの3日前、私は海くんから相談を受けていた。

金曜日の夜、午後9時ちょっと過ぎ。

お風呂上がりでリビングで母と妹とテレビを見ていた時にスマホが震えた。

慌てて自分の部屋に戻り、スマホをタップした。


「もしもし。俺だ。その...聞きたいことがあって...。いっつも土曜日にお弁当作ってきてくれるのって碧萌じゃないよな?誰だ?」

「潮夏帆ちゃんだよ。いつも家庭科室から海くんたちの練習見てる。少しでも力になりたいからお弁当作りたいって言ってたよ」

「へえ...!」


スマホを通してでも伝わる高揚。

スマホを握る手が震え、落とさないよう力強く握った。


「明日も碧萌来るよな?」

「うん。明日は夏帆ちゃん塾で来られないけど、私がお弁当預かって持っていくよ」

「分かった分かった。サンキュ、碧萌。でさ、夏帆ってさ、その...好きな人とか...いそうか?」


そう来ると思ってたよ。

そりゃ好きにならない理由がないもん。

海くんが好きなタイプは家事ができて優しくて3歩後ろを黙って歩いてくれるようなTHE大和撫子な人。

私はそうなりたくて...なれてない。

努力してもダメっぽい。

だから仕方ないのかもしれない。

諦めも大事だ。

胸に拳を当て、自分の気持ちにブレーキをかけながら、泣かないように堪えながら、言葉を紡いだ。


「夏帆ちゃんはね、強くてカッコよくて優しい人が好きだって。もしかしたら海くんかもね」


一気に言ったら後味が苦かった。

密かに聞こえる照れた声が苦味を増幅させる。

私は明日の約束をして「お休み」を言うとそのままスマホの電源を切り、ベットにダイブした。

辛い。

苦しい。

辛い。

苦しい。

痛い。

苦い。

やっぱり痛い。

涙が出そうで出ないのは、こうなることが、2人が出会って見つめ合ったあの日から分かっていたからなんだろうな。

明日が来なければいい。

時が止まればいい。

そんなこと初めて思った。

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