空よりも海よりもキミのことを知りたかった。
「ふう~っ」

「碧萌ちゃん、頑張って」


夏帆ちゃんの一切の不純物を含まない透明な声が聞こえた。

私は深呼吸をしてから水面に慎重にポイを入れた。

狙うのは一般的なあの赤い金魚。

欲も邪念も捨て近づいて来た金魚をおう。

隣ではたっくんがすでに2匹ゲットしている。

それなのに私と来たらまだポイを泳がせているだけ。

金魚と追いかけっこをし続ける。


「ほんと下手だな、碧萌は。俺がやってやるよ」


海くんがそう言って私の隣に回る。

久しぶりに砂原ツインズに包囲された。

だけど、嬉しくも楽しくもなんともない。

ただ数ミリだけ...悲しい。

なんで悲しいのか分からない。

なぜか悲しいんだ。

なんでこんな気持ちになるのか答えが出せず、金魚も捕まえられない状況が続き、やがて私は諦めた。

私は顔を伏せたまま海くんにポイを渡した。


「後はよろしく」

「はいよっ」


海くんは得意気に破れかけているポイを自由自在に操り、次々と獲物をゲットしていく。


「海くんすごいっ!」


夏帆ちゃんが手を叩く。

私も義務的に拍手する。

こんなことして、

こんなところにいて、

私、何が楽しいんだろう。

仲の良さを、

イチャイチャぶりを、

楽しそうに笑い合う顔を見せられて

何が楽しいの?

何が嬉しいの?

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