転生令嬢の悪役回避術ー心を入れ替え女王になりましたー

政務室に戻ると、サクラとハイメがふたりの帰りを待っていた。

「母上！父上！
待ってまちた！」

サクラはアイリーンの胸に飛び込んだ。

王太子になったとはいえ、サクラたちはまだ３歳なため、両親が恋しいようだった。

「おしい…！
サクラもそこまで言えるようになったのか。」

ハイメを抱きかかえながらヴァルテリはそういった。

ヴァルテリが惜しいというのはサクラが先ほど、「待ってまちた」と言ったことに対してだった。

「そうね。
でもそこまでしゃべれるようになったのね。

ねっ？サクラ、ハイメ。」

「そうだよ！
アリサと一緒にやってるもん！

マリーも来てくれるの！」

サクラは自信満々に現在勉強していることをアイリーンとヴァルテリに伝えた。

ちなみにアリサというのは乳母の子どもであり、サクラとハイメにとって一緒に成長してきた子だ。

マリーとは本名、マリーアント・ティーナであり、アイリーンの家庭教師ティーナ伯爵夫人のことだ。

「ふたりは頑張り屋さんね。」

「もっと頑張るのー！
サクラよりも頑張るー！」

サクラもハイメも今のところは学ぶことが嫌いではないようで、このまま学んでくれたらヴァルテリ以上の賢王になるのではとアイリーンとヴァルテリは期待していた。

アイリーンはサクラを、ヴァルテリはハイメを下ろすと目線をあわせるようにしゃがみ込んでサクラとハイメに伝えた。

「もっとお話ししていたいけど、お母様とお父様はやらなければならないことがあるの。
だからもう少しだけ待っててね。」

「私たちもこの部屋にいてもいい？
ふたりでおべんきょーしてるから。」

「あぁ。
ふたりともあそこのガラステーブルで勉強するとい。」

アイリーンとヴァルテリの政務室は部屋の扉から一番遠いところに政務机があり、その前にはソファーとガラステーブルが設置されていた。

そこで勉強をしていいと許可が出たサクラとハイメは自室に戻り、勉強道具を持ち寄って、ソファーにダイブするように座った。