転生令嬢の悪役回避術ー心を入れ替え女王になりましたー
ほどなくしてヴァルテリに抱っこされた状態でサクラは政務室に入ってきた。

「サクラ、何があったのか話してほしいな。
ハイメ、泣きそうで何があったのか教えてくれないの。」

アイリーンは決してサクラのことを怒るわけではなく、ただ何があったのかを教えてほしいというようにやさしい声色で話しかけた。

「お母様お父様、私の今日の服変?」

サクラをドレスの裾を広げ、アイリーンに見せた。

「サクラにとても似合ってると思うわよ。」

「あぁ、かわいいサクラによく似合ってる。」

アイリーンとヴァルテリはサクラからの問いに一切の間を開けずに答えた。

「あのね、あのね。
ハイメが私の今日の服を見て似合わないっていうの。

だから、レッスンが始まっても無視してたら急に部屋を飛び出してどこかに行っちゃったの。」

ようやく理由がわかったアイリーンとヴァルテリはハイメの方を向いた。

「ハイメ、どうしてそんなことを言ったんだ?」

先に声をかけたのはヴァルテリで、その問いに答えるようにハイメが口を開いた。

「僕はそんなにかわいい服着れないからうらやましかったの…

だって僕のは毎日白シャツに黒のパンツでしょ。
なのにサクラは毎日いろんな色でかわいいのばっかり着れるんだもん。」

女の子のサクラは毎日様々な色のドレスを着ていた。

それに引き換え男の子のハイメの服は若干の色味が異なるだけで、サクラに比べるとほとんど変わり映えがしなかった。

「そういうことだったのか。
よし、ハイメ!一緒に私の部屋に行こう!」

サクラをアイリーンに任せたヴァルテリはハイメの手を取り、ヴァルテリの私室へ向かった。
< 124 / 213 >

この作品をシェア

pagetop