転生令嬢の悪役回避術ー心を入れ替え女王になりましたー
いつ起こるか、それが起こるかどうかさえ分からない状況で、アイリーンは日々の政務に取り組んでいた。

キール帝国がグランディエ辺境伯領に侵入してきた時から、議会は中断されているが、このような時期だからこそ、やらねばならないことはたくさんあった。

アイリーンは現在国王代理のような立ち位置に居るので、女では何もできないといわれることがないように、いつも以上に政務に気を張っていた。

「アイリーン様、そろそろお食事をおとりにならないとお身体が持ちません。」

そう言ってリンネはトレーに載せられた食事を政務室のテーブルの上に次々と置いた。

「でも…
まだやることがたくさんあるし、何かがあったときに食べてる暇なんて…」

アイリーンは口先だけで答え、手は机上の資料を持ったままだった。

「失礼ながら申し上げさせていただきます。

国王陛下が不在のなか、アイリーン様はお忙しいとは思います。
しかし、それが食事を3日も食べないという理由になるとは思えません。

鏡を見ていただければ、やつれているご様子が分かると思います。
そんな状態でキール帝国とまともに戦えるとは思いません。

はっきり言わせていただきます。
第二騎士団の皆様の足手まといです。

もし、今召し上がらないのであれば机上の書類をすべて破り捨てます。」

リンネがここまでアイリーンに対してはっきりと意見を述べたのは今回が初めてだった。

まさか、こんなことを言われると思っていなかったアイリーンは手にしていた書類を置き、食事が用意されたテーブルのほうへ移動しようとした。
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