転生令嬢の悪役回避術ー心を入れ替え女王になりましたー
「ヴァルテリ王太子の入場です。」

再び侍従の声と音楽隊の演奏に合わせて今度は王太子が広間に入場してきた。

この国に住まう国民は国王の顔を知っていても、王太子の顔を知っているものは少ない。
なぜなら、王太子は表の政務には一切顔を出さず、見られるのは王宮での舞踏会、それも今回のデビュタントのように記念的なものにしか出席しないからである。

きらめくシルクのように柔らかそうな銀髪、少し薄い青色の目、細身の体で真っ白の正装である軍服に身を包んだ姿は誰の目にも美しく映った。

「本日は、皆さんの記念すべきデビュタントに参加することができて光栄です。」

王太子の声は凛とした中にも、甘いような声色でその場に居た女性たちはアイリーンを除き、みな王太子の虜になった。

王太子は挨拶を済ませると、国王の隣の椅子に座った。
< 32 / 213 >

この作品をシェア

pagetop