幼なじみの彼は王子様
なんて返したらいいのか分からない。
変に答えてもきっと傷つけるだけだから言葉を選ぶ。

「ほのちゃんは僕のこと嫌い?」

「嫌いなわけないじゃん!」

「じゃあ、僕だけのほのちゃんになってよ」

掴んでいた手を離しながらそう言った瑠衣。

どうしていいか分からない。

どうして今、瑠衣が怖いと思うのか分からない。

「ごめん。泣かせるつもりじゃなかった。今日の事は忘れて?」

どんどん涙が流れる私は頷くしか出来なかった。

「ほら、一緒に帰ろう」

「うん」

先生に見つかることなく、校舎を後にした私達には気まずい空気が流れる。

電車を待っている時も、電車をおりて家に向かう時も、会話は一切なかった。

「ばいばい。また明日」

「うん。また明日」

いつもより低い声のトーン。

玄関の鍵を閉めると、リビングには向かわずに自室に籠った。
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