永遠に咲く花は夢を見た。
1.(訪れと鈴)



季節は秋。
木の葉が赤く色付き、枯葉が地を埋め尽くす。
風が吹くと舞う枯葉の下には様々な虫達が
冬に備えて餌を蓄え、土に巣を作っている。
また冬が来るのか…時が進むのは早いな。
夏は水不足で死ぬかと思ったが、
図太く生きてますよ。
約150年前から人が寄り付かなくなった。
私の根っこが蔓延るこの土地の植物は全て
毒に侵されており、どんなに効く薬草でも
毒になってしまう。
私はこの何も無い草原で1人なのだ。
1人という響きは変だな…1輪だね(笑)
人喰いの花とか、殺人草なんて人々から一時期
恐れられて早150年…
もう私を知る者も1部のマニアぐらいになった
平和といえばそうなんだろうが
こうもつまらないと…
時が勝手に過ぎてくのが怖くなる。
朝を迎え、昼を過し、夜を越える。
季節ごとに変わりゆく者達を飽きるほど見た…
動くことの出来ない私には
見ることしか出来ないのだ。



おや、少し眠っていたようだ。
あれからそんなに時間は経ってないようだ。
だが、私が少し寝ている間に
誰かが私の大地に侵入したらしい。
本体から遠い根っこほど感度が悪いから
中々人か野生の動物か識別するのが難しい。
何やら鈴の音がする…
遠いが、こちらに少しづつ進んできている。
なんだこの妙に心地いい音色は。
“カラン カラン”“カランカラン”
だんだん迫ってくるが、足取りは重く
何やら迷っているみたいだ。
野生の動物では無い
人間だとしたら、追い出さねば
この大地の物を食べたら死んでしまう。
どうしたらいいのか…
そう悩んでいる間に人間は私の目の前に現れた
「…花?…こんな草しかない大地に」
不思議そうに呟く人は恐る恐る近寄り
マジマジと私を見つめてくる。
喋れたら追い返せるのに、
これ以上人の養分は食べたくない。
「先客のお花さんには申し訳ないですが、
ここで少し休ませてもらってもいいですか?」


…この人間は相当やばい人だと確信した。
普通花に話しかけたりするだろうか?
否、無いだろう。
地面から生えてる私逃げられないから余計怖いわ
誰か、助けて…

その人間は私から少し離れた所で枯葉を集め
火の粉が燃え移らないように水を与えてくれた。
一見親切そうに見えてきた私だが
また人間は私に話しかけてきた。
「お花さんはどんな品種の植物なんですか?
見た感じはとても鈴蘭と言う花に似ていますが、
咲く季節は夏の手前、
春のぽかぽかとした季節のはず…」
喋れたら…私は枯れないのよと言えるのに、
花が喋るとなるとこの人間より怖い気がするわ。
人間はなんでも探求したがるのは、
昔から変わらないようだ。
私を調べようとする人は稀に居た。
花の部分をちぎって持ってった人だって居る。
あれ結構痛いのよ。
植物も人間と同じで、関節部分や着いてるものを
ちぎられるのは、想像してくれたら分かるはず。
そう思うと何気なく積まれる花も、
踏もうと思って踏まれた訳じゃない虫も
理不尽極まりないものだろう。
この人間は…どっちなんだろうか。

私の横で焚き火をしていた人間は
火を消して、どうしてかここで寝るつもりらい。
「お花さん、僕は旅をしながら商売している
旅商人なのですが今日はとてもいい場所に出会え
ました。ここら辺は誰も近寄らないと
少し離れた町の人が教えてくれたんです。」
ここを教えるって、遠回しに死んで来いって
言われてるんじゃないか?
町の人ってことは、少なからずここの噂を
知ってる人だろうし…
旅をしてるならここがどんな場所か
知らない方が変な話だ。
「ここは昔村だったそうですね、
村の前は結構賑やかな街があったとか…。
ですが今はこうして賑やかの欠片もない大地に。
何も遮るものが無いので星がすごく綺麗です」
人間は悪態をついた後すぐ寝てしまった。
星か…確かにここから見える星は
何度見ても飽きないが、私だけで見るのは
もう飽きた。喋れたら…少しは
楽しくなるのだろうか。

スっとひとつの流れ星が流れた。
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