未来は霧のなか
「ヒロ。春休み、ディズニーランド行こうか。チョコのお礼。」
バレンタインデーが終わると、私と亮太は 期末テストの準備を始めた。
入試や卒業式があるから。
2月末から、期末テストが始まる。
放課後の図書館通い。
静かに勉強する合間 亮太は そっと言う。
「行きたい。行きたい。泊まりで?」
と少し 声が大きくなる私。
亮太は『シー』と指を立てて
「ヒロが泊まれるならいいよ。」
と私を見上げる。
一緒に朝を迎えることが 私は急に怖くなる。
母を 誤魔化すことは できる。
1年最後だから。仲間達と行くと言えば大丈夫。
でも 私はまだ、亮太と泊まる自信がない。
一晩中、一緒にいるって。
二人で眠って。
目覚めても亮太がいるって。
恥ずかしいし。
どんな顔をすればいいのか、わからない。
夜 別れて。
別々の家に帰る時 ずっと 一緒に居たいと思うけど。
でも、本当は まだ不安で。
私には勇気がない。
「泊まりは、もう少し先な。今回は、日帰りで行こう。」
黙って考え込む私に、亮太は 優しく言う。
「うん。」私はそっと頷く。
泊まれない訳じゃないのに。
泊まれない私が 申し訳なくて。
「ごめん。気にするなよ。ヒロのせいじゃないから。」
大人しくなった私を、亮太は 慰めてくれる。
「ううん。親は、何とか誤魔化せると思うけど。私が怖いの。泊まりは。」
私は正直に言う。
亮太は、スーッと温かい目になり
「可愛いな、ヒロ。案外、臆病で。」
と小さな声で言う。
「ふん。いいもん。」
私が照れながら 膨れて言うと 亮太はそっと、私の手に触れた。