未来は霧のなか

美佐子に言われて 伸ばしはじめた私の髪は、夏休みが近付く頃に やっと 肩に触れるくらいまで伸びた。
 

地元での 美佐子の生活は わからないまま 1学期は 終ろうとしていた。
 


「期末、どうだった?」

みんな、強がっていても 成績は気になる。

典子の言葉に
 
「最悪。私、日本史、ヤバいよ。」

私が答えると、あゆみは
 
「私は数学。私、文系なのに。数学、止めたいよ。」

と口を尖らせる。
 


「まあまあ。終わったことは、いいよ。やっと夏休みじゃん。」

美佐子は、明るく笑う。
 

「プールの補習、どうする?」


1学期、水泳の授業を 見学した分、夏休み プールに入ることになる。
 
「プールの補習があるなんて。知らなかったよね。」

膨れて言う千恵に、みんなが頷く。
 
「でも、夏休みのプールって、入ればいいらしいよ。どうせ暇だし。私、来るよ。」

と言う輝美に、みんなが顔を見合わせる。
 


「そうだね。来ようか。」

典子が言い、
 
「入ればいいなら。来てもいいかな。」

と私も答えた。
 
「じゃ、来る日決めて、一緒に入ろうよ。」

と明るくあゆみが言う。
 
「うん。何か、楽しみになってきた。みんなと自由に遊べるなら、遊園地のプールみたいじゃん。」

千恵が、嬉しそうに言う。
 


「えー。私、嫌だな。スクール水着の跡付いて、日焼けしちゃうよ。」

と顔をしかめる美佐子。


「いいじゃん。美佐子、誰かと海でも行くの?」

千恵に聞かれて
 
「海は行かないけど。裸になったとき、見えるでしょ。」

と美佐子は笑う。
 
「大丈夫。部屋、暗くすれば 見えないから。美佐子も入るんだよ。」

私が言うと、美佐子は、渋々 頷いた。
 


「美佐子、夏休みだからって、あんまり裸になっていると ヤバいからね。」

典子は、急に真面目な顔をする。
 
「大丈夫。ちゃんと気をつけているから。」

と得意気に頷く美佐子。


やっぱり、美佐子は 私とは違う。

他の4人とも。
 


どれだけ 学校で一緒にいても、美佐子の生活は わからない。

みんな、それでいいと思っている。


美佐子の生活を 知りたいけど。



知っても、同じことはできないから。
 
 



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