未来は霧のなか
29
美佐子は 手術の翌日は 学校を休み 金曜の朝 普通に登校してきた。
「美佐子、大丈夫。」
いつもと変わらない表情で 教室に入って来た美佐子。
私と千恵が 声をかけると 美佐子は 親指を立てて
「楽勝、楽勝。体育だってできるよ。」
と笑顔で答えた。
「駄目だよ。無理しちゃ。」
驚いて止める千恵。
「大丈夫だって。今日は体育ないし。」
と美佐子は ケロッと笑う。
仲間が集まると 美佐子は 手術の様子を 面白おかしく 話して聞かせた。
「私 お酒も飲むし 煙草も吸うから。麻酔 効き難いかと思ったけど。数数えて、って言われて。4までしか 覚えてないんだ。次に目を覚ました時は 別の部屋で寝ていたよ。」
みんな 手術に興味はあるけど。
あまりにも 平気で話す美佐子に 少し引いてしまう。
「1か月くらいは エッチ禁止って言われたけど。無理じゃん。」
と笑う美佐子。
「駄目だよ。少し、我慢しなよ。それに ちゃんと避妊した方がいいよ、これからは。」
典子は、真剣な顔で言う。みんなも頷く。
「私、ピル飲もうかと思って。来週、診察に行くから。その時聞いてくる。」
と続けた。
「そうだね。避妊しないよりは、いいんじゃない。」
とあゆみは言った。
みんな頷いたけれど。私はやっぱり驚いてしまう。
まだ16才なのに。
ピルなんか飲んで 体は 大丈夫なのかな。
そこまでして、自分で守らないと駄目なの。
相手に 避妊してもらうことはできないの。