未来は霧のなか

「ただ、ピルって 案外高いから。飲み続けるために エッチして。なんか、堂々巡りだよね。」

と美佐子は言った。
 

「もしかして。美佐子、エッチして お金もらっているの。」

輝美が聞くと、
 
「毎回じゃないよ。無理やり くれる人もいるんだよ。」

と美佐子は答えた。
 

「ふうん。」

とみんなは、無口になる。


美佐子の言葉を なんとか理解しようとして。
 
「体だけは、大事にしてよね。」

沈黙に耐えられなくて 私はポツリと言う。


美佐子は 少し驚いた目で 私を見た。そして
 
「ありがとう。」と言った。


珍しく素直に。



もしかして美佐子は 私の心が 離れていることに 気付いたのかもしれない。



私は 美佐子のために 自分を犠牲にはできない。

そのことに気付いてから 私は 美佐子に何も言えない。


美佐子の行動を 止める権利はないと思ったから。
 

美佐子の話すことは 異次元の世界で。

そこに憧れ 惹かれていたはずなのに。


いつの間にか 私は『もう止めて』と 思うようになっていた。
 


仲間に突き放されて。

美佐子は寂しかったと思う。

でも私も寂しかった。


変わってしまった自分が。



秋の夕方。

『野ばら』での時間が浮かんで。



あの時から半年しか経っていないのに。



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