未来は霧のなか
「それでいいんじゃない。ヒロが 変わったんじゃなくて。美佐子が やり過ぎたんだよ。」
亮太は 優しく言う。
亮太に 美佐子を批判されて 喧嘩していた私なのに。
亮太に 相談するなんて。
「変わってしまう私って、裏切り者じゃない。」
私が言うと、亮太は 優しく私を見る。
「そんな事ないよ。実際 美佐子は どんどんエスカレートしていったわけじゃん。大麻とか、中絶とか。ヒロだって 美佐子が そこまでしていると思わないで 仲良くしていたんだろう。」
亮太の言葉が、素直に 心に入ってくる。
「うん。大麻は さすがに引いた。」
私は微かに笑う。
私は 大人っぽい美佐子に 憧れていた。
私の知らない場所に 出入りして。
色々な先輩がいて。男性経験もあった。
自分に正直で。欲望を隠さない美佐子の 潔さが好きだった。
先生を落とすゲームとか、私が 考えつかないよう な楽しみを提案して。
すごく新鮮だった。
だから私は、美佐子を真似して 煙草を吸った。
「停学になって 美佐子が気付けば 違ったのにな。」
亮太は優しく言う。
あの頃、美佐子と離れることを 望んだ亮太なのに。
「私、気付くと思っていた。地元の仲間と遊ぶの、止めると思っていたのに。」
私は 力なく答える。
「そうだよね。だからヒロ 俺に必死で 美佐子を庇ったんだもんな。」
付き合い始めた頃 私達は 美佐子のことでばかり 喧嘩していた。
「意地張って。リョウに反発して。何回も喧嘩したのにねえ。」
私が、きまり悪そうに言うと、
「まあね。でも俺、ヒロには負けるから。」
と亮太は笑う。
「ねえ。リョウ すぐ 私に負けるって 言うけど。なんで?」
私が聞くと
「俺の方が、好きが強いから。」
と亮太は 照れて答えた。
私も照れて、顔が赤くなる。
「そんなことないよ。私だって リョウのこと すごく好きだよ。」
少し俯いて、私が言うと
「うん。わかる。最近 ヒロ 素直で可愛いから。でも まだ、俺の方が強いな。」
と言って、亮太は 私を抱き寄せた。
「リョウの魔法。キスされると 素直になっちゃうの。」
そう言う私に 亮太はキスをする。何度も。
だんだん熱く、激しくなる。
「もっと素直にしていい?」
甘く聞かれて 頷く私。
満たされることを覚えてから 亮太を 拒むことができない。
「素直でいい子だね。」
私を満たすことで、自信を身に着けた亮太。
余裕を感じさせる言葉に 私は 甘くのめり込んでいく。
私も 愛されている 余裕があるから。
だから美佐子を突き放すことができたのかもしれない。