未来は霧のなか


「私、メール無視されて。ずっと 嫌われていると 思っていたんだよ。」

私は 亮太の顔を見て 責めるように言う。
 

「その逆。ヒロと会わなくなって ヒロのことに気付いたの。」

そう言って亮太は 私の手を強く握る。
 
「私のこと?」


一瞬、言葉の意味が解らずに 私は聞き返す。
 
「ヒロを 好きってことだよ。」

少し怒ったように ぶっきら棒に言う亮太。


私も力を込めて、亮太の手を握る。
 

「私 中学の頃から リョウのこと 好きだったよ。だからメールしたんだよ。」

私が言うと、亮太は 驚いた顔をした。
 

「嘘だろう。」

と言って。私は首を振り
 

「リョウ 私のこと 全然 意識してなかったでしょう。高校生になったら 全然 会わないし。」

私が続けると
 

「中学の頃は 好きとか 恋とか わからなかったからなあ。でも俺 何度も ヒロの事 電車で見かけていたよ。」

亮太の言葉に、今度は私が驚く。
 

「嘘。声かけてくれた時 半年ぶりくらいに 会ったんじゃないの。」

私の言葉に、亮太は頷いて
 

「ヒロ、少しずつ髪が伸びて。可愛くなっていったから。俺 中々 話しかけられなくて。」

亮太に言われて、私は自分の髪を触る。
 

あの時、亮太と付き合わなかったら。

私は今も 美佐子と一緒にいたのかな。


もしかしたら、美佐子と一緒に クラブに行って。

私も 停学になっていたかもしれない。
 


ちょうど 亮太と付き合い始めた頃から 美佐子の生活は荒れ始めた。

美佐子の生活に 付いて行けないと 思い始めていたから 亮太に惹かれたのかな。
 


「リョウ、私に声をかけてくれて ありがとう。」


珍しく 素直に言う私に、亮太は 驚いた顔をする。

「なんか 素直過ぎて 怖いんだけど。」と言う。
 

「うん。もう意地張るの、止めたの。」

私は 少し微笑んで、亮太を見る。

さっき 藤田にも 素直に話したし。
 


「いいよ 少しくらいは 意地張っても。あんまり素直だと 可愛すぎて 離せなくなるだろう。」

ギュッと私を引き寄せて 亮太は 私に顔を寄せた。

そのまま キスをしたくなる衝動を 二人共抑える。


道端だから。



昼間だから。





角を曲がると、亮太の家だから。

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