未来は霧のなか
亮太と付き合って、結ばれて。
私は大人になった。
去年の今頃、私は とても不安定だった。
意味もなく イライラして。
親とも 素直に話せなくて。
いつも自分の部屋にいた。
でも最近 私は リビングで過ごす時間が増えている。
気が向くと 母を手伝って 食器洗いをする。
父とも 自然に話すし 父の言葉も 素直に受け止められる。
「お兄ちゃん、彼女いるの。」
兄の部屋に マンガを借りに行き 聞く。
「さあね。教えない。」
野球のボールを 投げながら、兄は言う。
高校球児だった兄は、いつも 野球ボールを握っている。
「別に、いいけど。どうせお兄ちゃんは モテないから。彼女なんて できないか。」
少年マンガを ペラペラめくりながら 私が言うと、
「お前 自分に彼氏 できたからって うるさいよ。」
と兄は笑う。
「エヘヘ。お兄ちゃんも 恋とかするのかな って思うと ちょっと笑っちゃう。」
ボールを ぶつけようとする兄から逃げて、部屋に戻る私。
いつから こんなに自然に 家族と話すようになったのかな。
それよりも、いつから 話せなくなっていたんだろう。
子供の頃は 家族が大好きで 何でも話していたのに。