未来は霧のなか
32
終業式の放課後、久しぶりに仲間達と寄り道をした。
いつものハンバーガーショップ。
昼食を兼ねて。
「あーあ。1年も終わりか。」
ポテトをつまみながら千恵が言う。
「本当。早かったよね。」
頷くあゆみ。
「えー。私は長かったよ。」
美佐子が言うと 妙に説得力がある。
「うん。美佐子は色々あったもんね。」
典子に言われて
「色々、あり過ぎ。美佐子、来年は大人しくするんだよ。」
輝美が笑いながら言う。
「まあね。適当にやるよ。」
と美佐子答えたけれど。その言葉を、誰も突っ込まない。
「誰と同じクラスになるのかな。それも心配だよね。」
私が言うと
「浩子と典子は 絶対、一緒だから。いいよね。」
とあゆみが言う。
2年生のクラスは 就職、専門学校コースが2クラス。
文系進学コースが2クラス。
理系進学コースが1クラスで 分けられる。
典子は 看護大学を目指しているから、理系コース。
私はただ、社会よりも 数学の方が得意だから。
とりあえず理系にしただけ。
まだやりたい仕事も、進みたい大学も決まってない。
千恵とあゆみと輝美も、数学が苦手だから 文系コースを選んだだけ。
みんな、将来なんて決められない。
「クラスなんて あんまり関係ないよ。私達 クラスの活動に参加しなかったじゃん。」
典子が言うと
「でも、来年は修学旅行もあるし。」
と輝美は 不安そうな顔をする。
「修学旅行か。あんまり 行きたくないね。」
私が言うと
「行ったことにして、彼氏と 旅行に行きなよ。」
と美佐子は 過激なことを言う。
「まさか。バレたら大変。それに私 そんなに何日も リョウと一緒にいたいと思わない。」
私が言うと、美佐子は驚いた顔で
「そうなの?ずっと一緒にいたくないの。」と聞く。
「うーん。まだそこまでは いいかな。一緒にいるのは 楽しいけど。一人の時間もほしいよ。」
私の言葉に典子も頷いて
「私も。泊まりとかは、ちょっと無理。」と言った。
「えー。何で?私 遠藤さんとなら 同棲したいよ。」
と美佐子は言う。
私と典子は、顔を見合わせて『うーん』と唸った。
「見せたくない姿とか、あるじゃん。」
と言う典子に、私は頷いて
「そう。逆に 見たくない姿も 見えちゃうかもしれないし。」
と私は続けた。
「そんな。裸の付き合い しているなら 気にならないよ。」
と美佐子は言う。
どうして。そんな風に、全身を向けるの。
いつも目の前だけを見て。
全部を受け止めてほしいと思うの。
傷付いても。また同じように。
美佐子は 私達よりも ずっと純粋だと思う。
正直で。失敗を恐れない。
私を惹きつけた美佐子の魅力。
でも ずっとそういう風には 生きられないと 私は知ってしまった。