未来は霧のなか


私の胸は 激しく高鳴る。

一生懸命、勉強して。

お父さんと同じ仕事に就いて。


亮太の将来に 私も組み込まれている。


私は 甘いときめきと 同じくらいの 負担を感じた。
 


私だって今は、亮太が好きだけど。

今は、離れたくないって思うけれど。


でも 10年後の 私達のことまでは、想像できない。
 

黙ってしまった私を 不安そうに見つめる亮太。

私は 亮太の首に 腕を巻き付け
 

「すごく嬉しい。ありがとう。」と言った。

亮太は優しく、私の髪を撫でる。
 

「俺も。ヒロと付き合って 大人になったから。ヒロには 感謝している。」と言った。
 


私は 罪悪感で涙が滲む。

私には、こんな風に言われる 価値はない。
 

今、大好きだから。

ずっと 一緒にいたいと思う亮太と、

先のことは わからないと思う私。



もしかして 私の方が 大人なのかもしれない。

現実的で。割り切っていて。
 


亮太は純粋で、まだ現実を知らない。


これから 私達に 何があるかなんて わからないのに。

今を信じられるから。
 


そう思ったとき 私の中に 新しい感情が芽生える。

亮太が愛おしくて。


母性本能にも似た気持ち。

亮太を守り、支えたいと思う。
 


「リョウ、キスして。」

亮太の胸から 顔を上げて、甘えた声で言ってみる。

優しい眼差しで 包み込みように 私を見る亮太。


そっと私にキスをする。
 

いいよ。甘えるふりをしてあげる。


亮太が 守っていると思わせてあげる。



そう思いながら、私は亮太の背を抱いた。
 

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