未来は霧のなか
半端な時間の プールの後。
美佐子は 珍しく、みんなと寄り道をする。
「地元に帰っても、まだ誰もいないから。」と言って。
美佐子の友達は、何をしているのだろう。
普通の高校生じゃないのか。
みんなで、ハンバーガーを食べながら
「私と浩子、先生を落とす競争するから。」
と美佐子が言う。
「何、それ。」
千恵が驚いた顔で聞く。
「私は信太郎。浩子は藤田。どっちかが、手を出したら終了。」
美佐子が言うと、
みんなは、「えー。」と口々に言う。
「私、無理。落とすなんて、できない。」
私は、急に怖くなって言う。
「大丈夫。先生だって人間だから。好きって言われて 悪い気はしないって。」
妙に乗り気な美佐子。
「好きって言うの?」
私が驚いて聞くと
「言わなきゃ、わかんないでしょう。先生だって。まずは、そこから始めるの。」
余裕たっぷりの美佐子に
「私、嫌だ。告白するくらいなら、片思いでいい。」
私は、強く首を振る。
他の仲間も、私の言葉に頷く。
「じゃ、まず私が 信太郎に近付くから。浩子も真似して。それなら、できる?」
美佐子は、優しい姉のような目で 私を見る。
私は、素直に頷いてしまう。
「みんなも、協力して。私達と先生を、なるべく近付けてね。」
美佐子の言葉に、みんなも頷いていた。
多分、みんな興味があったから。
美佐子が どんな風に、先生に近付くのか。
私は 藤田先生を 意識し始めていた。
もしかして 本気で好きなのかもしれない、と思うほど。
「スタートは、始業式ね。」
と笑う美佐子。
水泳の補習も、あと2回で終わる。
残りの夏休みを、美佐子は どんな風に過ごすのだろうか。