未来は霧のなか

「ごめん浩子。幸也に呼ばれた。私、行くから。浩子も、もう帰って。」

1時間くらい 話していると 美佐子の携帯が鳴る。

画面を開く美佐子。

メールを確認すると、美佐子は言った。
 

「うん。わかった。コーヒー、いくらですか?」

私は頷いて、拓巳先輩に聞く。
 
「また、美佐子は。」

と言って 拓巳先輩は 苦笑する。そして

「浩子ちゃん、コーヒー代は いいよ。」と笑顔で言った。
 

「ごちそう様です。」

椅子を下りて お辞儀をする私を 美佐子は急かす。
 

「幸也って誰よ。今度、ちゃんと教えて。」

と私が言うと、美佐子は 嬉しそう笑って頷いた。

そして、

「はい。これ、あげる。吸う練習して。」

と美佐子は、開けたばかりのマルボロを 私の手に握らせた。


その日の帰り通、ショッピングセンターで 私は 灰皿用に小さな缶と ファブリーズを買った。

初めて吸った煙草に、私の心は 高揚していた。

少しだけ 大人になった気がして。


美佐子に 近付いたことも、嬉しかった。
 



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